退職後にとんでもない事実が判明…「業務丸投げ」が引き起こした結果
◇「実務経験豊富」には要注意
Aクリニックの院長は、履歴書に書かれていた「医療事務歴10年」の実務能力を見込んで、新しいスタッフを採用しました。実際、働き始めてみても、患者対応もそつがなく、さすがは実務経験10年という安心感を感じさせてくれます。そこで院長がこのスタッフに受付業務を一任したのですが、それが失敗のもとでした。3年後、家庭の事情でこのスタッフが退職することになり、後任のスタッフを採用しました。後任も経験者だったため、引き継ぎなしで実務に入ってもらいましたが、問題はこのときに発生しました。なんと、再請求するレセプトが引出しに入ったまま放置されていたのです。病名転帰もまったくの手つかずで、主病名が20以上のレセプトもあります。前任のスタッフは自身の過ちを隠したまま退職。院長は任せきりにしたことを反省し、複数のスタッフがレセプト処理を行う教育体制の構築に着手しました。
医療事務は経験が実力を左右します。患者対応などをそつなくこなしていたことからもある程度実務は任せられると判断したのでしょう。最近でも転職してクリニックに勤務している方が入職して間もなく、開かずの引き出しなどと笑いながら未処理の返戻や査定を入れている引き出しを見せるベテラン職員がいて、どうしたらよいのか困惑されて相談を受けました。正直、クリニックではかなり横行しているようです。院長はちゃんとやってくれていると業務を一任していると大変な結果を引き起こします。保険医療機関における診療報酬請求権の時効については、令和2年3月診療分までは3年間、令和2年4月診療分からは原則5年間。なお、その起算日については、診療月の翌月1日とされています。放置され続けたレセプトでの損失は多大なものとなります。教育体制の構築やスタッフとの関係性を深め、こういった事例がないように早めの対策が必要です。ぜひ、ご連絡をください。